■6月30日(日)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:青○裕一、稲○元孝、沖○幸、加○孝志、加○徹、金○清志、小○正浩、近○郷、芹○修、原○望、原○慎一、深○一伸、松○成俊、柳○明、田中徹 以上15名(以上敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
■今回は社団戦とバッティングしてしまい、参加者15人とやや少な目でした。
久○さんや馬〇原さん、太〇岡さん等は社団戦の主力選手でもあり、当然工房には不参加。従って春霞賞の選考は来月に持越しとなりました。
■当日はレジメの作成・印刷が大幅に遅れ、今度こそ本当にヤバイかも、と何度も冷や汗をかきました。そりゃ6月の例会の前日になってやっと5月の例会参加記をブログにアップしている時点で、既に手遅れですよ、普通。
そこでやむなく掲載作品数を減らし、参考図を省略する等手抜きを重ね、プリンターのインク切れにはモノクロ印刷という非常手段で対抗し、奇跡的に3時を少し過ぎたところで会場に入ることが出来ました。
しかし…、その代償として、図面と作意手順が一致しないものが3作もあるなど、お粗末極まりない代物になってしまい、本当に申し訳ありませんでした。
■とにかく会場に着くなりプロジェクターを準備し、注目作の紹介を開始したものの、予習が不十分でほとんど解説にならず、逆に出席の皆さんに変化・紛れを教えていただく始末。
次からは心を入れ替えて頑張りますので、ご容赦ください。
と言ってるそばからすみません、7月の詰工房は不参加です…。
■5時からはいつもの店で2次会です。
久し振りにバカ詰を解きました。バカ詰は超短編に限りますな。
2時間少々参加して、早めに失礼してきました。
2次会の模様等を知りたい方は、hirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
(今気づきましたが、「詰将棋の欠片」では参加者数が16人となっています。誰を漏らしてしまったんだろう(汗)…)
■それでは、第6回春霞賞のご紹介です。
平成30年 第6回春霞賞
大 賞 岩村凛太朗氏作 (詰パラ4月号 デパート3)
◇可成地点に打つ限定遠角合
★3手目22歩以下の紛れ順を、21歩成に同角成で逃れるため87角合とする。
★今まで「ありそうでなかった意味付け(止○丘八)」が評価され、見事大賞に輝きました。
金○清志「2018年で一番、本賞にふさわしい作。シンプルな表現も良い。」
竹○健一「可成地点での捨合は初めて見た気がします。構想作として評価したい。」
會○健大「原理図のようなシンプルさにやられた。個人的に一押し。」
池○俊哉「中合の意味付けが良い。」
馬〇原剛「今までなかったのが不思議な意味付け。」
久○紀貴「シンプルながら見たことがない。89金をそのままにしない収束も素晴らしい。」
小○正浩「87角合の意味付けが面白いですね。」
太〇岡甫「2度目の99角が出るのが凄い!」
宮○忍「目新しい限定合をシンプルにまとめている。」
佳 作 広瀬 稔氏作 (詰パラ9月号 短期大学11)
◇『35桂+同龍』×4回
★56角~45歩~44角とセットした駒を崩す度に35桂捨てが繰り返されます。
★「『35桂、同龍』×4は凄い(馬〇原剛)」としか言いようがありません。傑作です。
宮○忍「詰崩しと龍の翻弄の組合せだが、表現が見事。」
加○孝志「無駄のようで無駄のない駒の捨て方。」
會○健大「作図の動機が作者らしい…と思わされる境地に達しているのが凄い。」
原○望「打った邪魔の消去」
深〇一伸「好み。」
柳○明「3枚打たせて桂捨で消去する」
佳 作 若島 正氏作 (詰パラ6月号 デパート3)
◇打診中合+ダブルフェニックス
★序で消えた角が、2枚とも元の座標に蘇える。
★「ダブルフェニックスの理想的表現(柳○明)」であり、見る者を魅了する若島流の逸品です。
三○淳「二枚角の再現が奇跡的。」
野○村○彦「詰将棋として凄いが、構想も文句なし。」
會○健大「駒の運動と理知性がうまく融合。」
池○俊哉「角二枚復活の図と初形の対比。」
小○正浩「序盤で消えた2枚の角が再現することに驚きました。
原○望「フェニックス。」
佳 作 齋藤光寿氏作 (詰パラ8月号 デパート3)
<
◇龍の位置変更による打歩詰回避
★8手目73にいた龍が、18手目の局面では83にいる!
「中合連発をはさんで一路遠くに再現、凄い!(野○村○彦」」
★マジックを見ているようだ…。
稲○元孝「双方好手の応酬が良い。」
小○正浩「龍が1マスのみ動くことによる打開と、43への合駒が全て異なる巧みさを買います。」
池○俊哉「32角(馬)のリフレイン。」
加○孝志「43合攻防を楽しむ。66歩打を作る竜面白い。」
三○淳「逆王手の43金をめぐるロジックが秀逸。」
★上位4作の差は本当に紙一重しかなく、近年の構想作の分野の充実振りが端的に表れた1年だったと言えるでしょう。
★時代は令和。今年も新時代に相応しい、更に野心的な構想作が続々と誕生することを期待いたします。
■全国大会までもう1週間を切りました。大会にご参加の皆さん、大阪でお会いしましょう。
ではまた。
No. 200 第343回詰工房例会報告
No.201 詰パラ2003年7月号濱田氏作について
■前回のブログで第6回春霞賞受賞作をご紹介したところ、重要な指摘がコメント欄に寄せられました。
それは、「2手目の玉方最遠打は、詰パラ平成15年7月号中学校の濱田博作9手でも行われて」いるというもので、それが下図。
■確かに2手目27飛合は、5手目23桂生に対し同飛成を用意した受けで、「可成地点に打つ玉方最遠打」です。この図は全く記憶にありませんでしたので、ご指摘に感謝申し上げます。
自分は岩村氏の構想を「可成地点に打つ限定遠角合」と紹介していましたので、その点においては前例があったと言うことになります。
違うのは、濱田氏の27飛合は「普通合」で、岩村氏の87角合は「中合」という点です。
濱田氏作の結果発表時の解説には「限定中合」とありますが、攻方28香は玉方17馬でピン止めされていて、2手目どこに合駒されても同香と取ることはできませんので、中合ではなく普通合(自分の認識では)です。
岩村氏の87角合は中合であることに価値があるので、作品としての評価に大きな影響はないと考えます。
ただ、濱田氏作についてはこの機会にもっと再評価されてしかるべきでしょう。
本作は玉方最遠打に加えて桂の3段跳ねという意欲作でしたが、結果発表では5作中最下位でした。
しかし中にはこんな短評も。
名越健将―詰将棋の「可能性の大きさ」に激しく感銘する。10年後、こんな作品がいっぱい載ってるといいですね。
あたかも岩村氏作の登場を予見していたかのような、先見の明に感服します。
確かに、今ではこんな作品がいっぱい載るようになったではないですか!
変寝夢さん、コメントありがとうございました。
「この詰2019」の久保さんの論考を読むと、構想作の未来はこれからだ、との思いを強くします。
その主役は10代、20代の若者たち。自由に、やりたいことをやってください。でもって、おじさんたちも負けるな!
ではまた。
No.202 第345回詰工房例会報告
■8月25日(日)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:青○裕一、稲○元孝、岩〇修、大○光一、沖○幸、加○徹、金○清志、小○正浩、原〇慎一、深○一伸、田中徹 以上11名(敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
■7月の例会は町内の祭礼と重なり欠席したので、このブログも休載しました。勝手に夏休みを取ってしまい、すみませんでした。
7月は例会と祭礼がバッティングしないか、毎年気を揉んでいます。
これまでは幸運に恵まれることが多かったのですが、今年はダメでしたね…。
■さて、8月の例会に戻ります。
社団戦の開催日に当たったこともあり、参加者11名。落ち着いた例会になりました。
自分は会場に入ってから3時までの間は、その日紹介する作品の予習に当てています(前の日までにやっとけ? ごもっとも)。
そして3時を過ぎると、頃合いを見てプロジェクターの出番。
いつもは解図や対局、雑談等で盛り上がっているところを中断させてしまい、心苦しく感じるのですが、この日は余り気を遣う必要がありませんでした。良いのか悪いのか、微妙です。
ともあれ、注目作の紹介がスタート。
予習の効果もあって、順調にプレゼン終了か、と思われましたが、大甘でした。
スマホ詰パラの発表作紹介の中で、「この作者は要注目です」と言ったら、小○さんの「それは詰工房常連の〇○さんでは…」に唖然。
深○さんには「『この詰』に例題として出てますよ」と指摘され、茫然。
将来の大物と思ったら既に大物だった…。
また、「4桂連打+3桂成り捨て」作を褒めていたら、TETSUさんに「こんなのがありますよ」と4作ほど前例があることを教えられました。
毎度のことながら、勉強不足で申し訳なし。
■TETSUさんと言えば、パラ9月号の「おもちゃ箱だより」で、“注目作の紹介”について取り上げてくださいました。ありがとうございました。
スマホ詰パラの発表作をいかにして歴史に残すか、そろそろ知恵を絞る時期です。
ネットでの中継等も提案されていて、非常に魅力的なのですが、仮に動画で生放送なんてことになるといささか…。その時は桂花さんに司会を譲りましょう。
■スマホ詰パラの発表作から2局紹介します。
スマホ詰パラ 2019年7月 i@hiro氏作 No.13231
中合の角を動かす。最近ポピュラーな構成ですが、本作は角が最大距離を移動するのが特徴。
前例はあるでしょうし、形にも問題ありです。それでも本作には誰かの物真似ではない、創意が感じられます。
作家として最も大事な資質です。
スマホ詰パラ 2019年7月 高等遊民氏作 No.13285
実は本作、ページ数の関係で最後にカットしたため、今回のレジメには載っていません。しかし個人的に気に入っていたので、ここでご紹介することにしました。
34金を45桂に置き換える手順が秀逸です。
■5時からは2次会。自分は祭礼の反省会(本当の!)があり、残念ながら直帰しました。
■この日の模様を知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
■今月は春霞賞の選考はお休みでしたが、7月の例会で今年3月号と4月号の候補作が決まっています。
◇詰パラ 2019年3月号
大学9 青木裕一氏作
◇詰パラ 2019年4月号
大学10 若島正氏作
大学院7 太刀岡甫氏作
大学院8 馬屋原剛氏作
4月号は3作が同じ票数で並ぶ大接戦。なお内容については、頁を改めてご紹介いたします。
■このブログのタイトルには「祭り」とあるのに、今まで全く祭りについて触れたことがありませんでした。そこで、今回は我が町内の祭礼について、ざっとご紹介します。
[土曜日 午前]
幟たて、櫓や山車の組み立て、夜店の設営等、ひたすら準備。
一番疲れるのがここかも。
[土曜日 午後]
神輿と山車で町内一周。
神輿は3つあるが、子ども神輿ばかり。最近は誰も肩で担ごうとせず、腰の辺りで両手で抱えている。神輿は沈み、“担いでいる”感ゼロ。しかも後半は大概親が肩代わりすることになる。が、それも良し。子どもたちの笑顔が一番。
山車には囃子の太鼓を載せ、練習を重ねた子どもたちが交代でバチを握る。自分は山車の後に付いて笛を吹く。開放的で気持ちが良い。
[土曜日 夜]
盆踊りと夜店で賑わう。
神社の境内はチョー狭く、人口密度が高い。自分はかき氷の担当。1杯50円と子どもにも手頃な価格設定。他には焼き鳥、焼きそば、飲み物、(おもちゃの)金魚すくい、福引等。結構行列ができる。
盆踊りの前に囃子獅子舞の奉納。夜店を一時離脱し、ここでも笛を吹く。
夜店に戻り、結局かき氷を200杯近く売り上げる。自分が担当するようになってからの最高記録だ。
片付けをして1日目終了。心配していた雨も降らずに済んだ。
[日曜日 午前]
神事(本祭り)。宮司が祝詞を挙げ、神楽舞を奉納。
自分は神楽の締め太鼓を担当。地味だがこれが本祭りだから手抜きはできない。途中から良く晴れて大汗をかく。
[日曜日 午後]
再び神輿と山車が町内を回る。
例年2日目の方が子どもが少ないのが悩みの種。
自分は境内に残ってお留守番。
以上で行事は終了。
全員で片付けをした後、夕方から反省会と言う名の飲み会に突入。これが一番の楽しみだったりする。
1000世帯ほどの小さな町内の、ささやかなお祭りではあるが、それなりに達成感はある。
今年は台風が上陸したにも関わらず、雨は夜中に降っただけで、奇跡的にすべての日程を消化できました。
神様のご加護に感謝。
■ではまた。
No.203 春霞賞候補作紹介 2019年3月号
■7月の詰工房例会で、今年3月号と4月号の候補作が決まりましたので、ここでご紹介しておきます。まずは3月号から。
■詰パラ2019年3月号 大学9 青木裕一氏作 ◇飛び石連合
89馬、(イ)67桂合、同馬、45桂合、同馬、34香合、15桂、13玉、12と、同玉、24桂、13玉、23桂成、同玉、22と、同玉、32桂成、同玉、44桂、22玉、11角、31玉、32桂成、同玉、33角成、同玉、34銀、32玉、54馬、41玉、42銀成、同玉、43銀成、51玉、53香、62玉、52香成、71玉、72歩、同銀、62成香、同玉、53馬、61玉、52成銀 まで45手詰
(イ)34香合なら、15桂、13玉、79馬、68歩合、23桂成、同玉、22と、同玉、12と、31玉、97馬以下詰。
■作者の言葉、及び担当スタッフ短評
作者(結果稿解説より)-97-31のラインで王手をすれば詰みなので、89-23のラインから79-13のラインを経由して回るのが攻方の狙い。それを防ぐために79-13のラインの馬の行き先に利かせるために、桂の連合をします。
久保紀貴-初手89馬に対する67桂合~45桂合が、31-97ラインへの馬の転回を防ぐ連続合。相馬慎一氏の4桂連合を彷彿とさせますが、馬の軌跡が異なるため、防ぐポイントも異なります。どちらかといえば、武島氏作(あちらは桂の連続移動合)に近いでしょうか。
馬屋原剛-馬で王手するときは寄りと引きの2種類を選べるので、桂中合で1箇所だけ防いでも通常は連続中合の意味づけにはなり得ない。本作では、 桂中合を一間とびにすることによって、馬の王手を物理的に寄りだけにしている点が工夫と言えよう。
太刀岡甫-馬寄を防ぐために飛び飛びの中合が出る。この位置関係を実現するには3つの王手ラインを用意する必要があり、創作難度は高そう。
久保-青木作、実際構図の取り方巧いと思いました。
(以下Twitter等からの抜粋)
久保-補足。転回を防ぐ意味づけが、連結や合駒稼ぎの防ぎではないところが新しいところです。
大崎壮太郎-武島作も同じ理由の一間とび桂移動合じゃなかったでしたっけ。図面忘れてしまったけど。
馬屋原-あれ、そうでしたっけ? 私も図面忘れたので、誰かプリーズ。
大崎-ここ(「書きかけのブログ」https://kakikake.hateblo.jp/entry/2015/07/21/204130)で書いてました。
<参考図> 詰パラ2014年3月号 大学8 武島宏明氏作
23歩成、同金、14香、13香合、同香成、同玉、14香、同金、22角、12玉、11角成、同玉、18飛、77桂成、同馬、55桂、同馬、33桂、22銀、12玉、24桂、22玉、32桂成、13玉、23香成、同玉、33馬、13玉、25桂、同金、15飛、同金、25桂、同金、14歩、12玉、22馬 まで37手詰
馬屋原-一間とびが前例ありだと、ちょっと評価下がるなあ。
久保-つまりですね、相馬作と武島作の中間的な位置付けなんですよ。
<参考図> 2013年7月 81puzzler 第5番 相馬慎一氏作
32歩、21玉、33桂生、同銀、31歩成、同玉、97馬、86桂合、同馬、75桂合、同馬、64桂合、同馬、53桂合、41香成、21玉、12銀成、同玉、23角、22玉、34桂、13玉、46馬、35歩合、25桂、23玉、33桂成、同玉、24銀、34玉、23銀生、33玉、34歩、同成銀、同銀成、同玉、43銀打、33玉、55馬、44金合、45桂、同桂、44馬、同玉、54金、33玉、42銀生、34玉、43銀生 まで49手詰
馬屋原-なるほど。青木作の特徴は、合駒を稼いだり、オーロラ手筋を利用することなく、「大きく転回する」という意味づけがシンプルなところかな。
馬屋原-ついオーロラ手筋って書いてしまいましたが、連結手筋ですね。
久保-はい。そしてそこが、相馬さんの作品に通じるところでもあります。
馬屋原-ん? 相馬作は連結手筋ですよね?
久保-そうです。 ただし、武島作は桂以外の合駒稼ぎを防ぐ目的になっていたはずです。
久保-はじめ見た時そう思ってたのに忘れてた。
馬屋原-それにしても、青木作のようなシンプルな意味づけの作品が、なぜ今まで作られなかったか不思議ではあります。
馬屋原-馬に対して金や銀の連続合がでたらすごいですね。
久保-不可能ではないですね。
■4月号の候補作は別途更新します。ではまた。
No.204 春霞賞候補作紹介 2019年4月号
■春霞賞候補作の紹介、続いては2019年4月号分。この月は大激戦で、3作が全くの同点で並びました。
■詰パラ2019年4月号 大学10 若島正氏作
◇同じ箇所での「金先金歩+銀先銀歩」玉方応用
97香、96歩合、85金、同玉、82龍、84金合、同銀成、同桂、
76金打、同銀、35龍、65銀打合、同龍、同銀、86銀、94玉、
96香、同桂、95銀、同玉、62角成、同馬、86金、94玉、
95歩、同馬、同金、同玉、73角、94玉、84角成 まで31手詰
久保紀貴-金銀両方の不利合を、玉方銀の位置の違いだけによって切り分け、実現した作品。作ったことがある人であれば金と銀の切り分け方自体はよく知るところでしょうが、両方取り入れて作品にしてしまうアイデアは非凡と思います。97香限定打の序も流石。
馬屋原剛-ikironさんのコメントと被るが、同じ舞台で、銀の位置の違いだけで金、銀、の不利合を切り分けてる点に脱帽。発想も構成力もずば抜けている。
太刀岡甫-不利合もそこまで珍しくなくなった昨今だが、同じ打歩を巡って別の不利合が出るというのが驚きである。2つの合駒の間隔が狭いのが良い。変化伏線の限定打も盛り込み、収束も捌けるため完成度が非常に高い。
■詰パラ2019年4月号 大学院7 太刀岡甫氏作 「ストライクショット」
◇「遠打+馬鋸+角筋遮断の飛車移動」のブルータス手筋
91と、同玉、81歩成、92玉、91と、82玉、81成香、72玉、
71成銀、62玉、61成香、52玉、42と上、同金、同と、同玉、
41金、52玉、51成香、62玉、61成銀、72玉、71成香、82玉、
83歩、同成香、93歩成、同成香、81成香、72玉、71成銀、62玉、
61成香、52玉、51金、42玉、41成香、32玉、33歩、43玉、
91と、同玉、81歩成、92玉、91と、82玉、81成香、72玉、
71成銀、62玉、61成香、52玉、42と上、同金、同と、同玉、
41金、52玉、51成香、62玉、61成銀、72玉、71成香、82玉、
83歩、同成香、93歩成、同成香、81成香、72玉、71成銀、62玉、
61成香、52玉、51金、42玉、41成香、32玉、33歩、43玉、
65馬、33玉、55馬、24玉、15と、同玉、27桂、14玉、
18飛、23玉、35桂、32玉、65馬、33玉、66馬、32玉、
76馬、33玉、77馬、32玉、87馬、33玉、88馬、32玉、
98馬、33玉、99馬、32玉、31成香、42玉、41金、52玉、
51成香、62玉、61成銀、72玉、71成香、82玉、88飛、87歩合、
81成香、72玉、71成銀、62玉、61成香、52玉、51金、42玉、
41成香、32玉、33歩、同玉、87飛、77金合、同馬、24玉、
25歩、14玉、24金、15玉、59馬、同成銀、17飛、16歩合、
同飛、同玉、17歩、15玉、16銀、26玉、27銀右、15玉、
16歩 まで113手詰
太刀岡甫-ブルータス手筋を馬鋸で行うだけでなく、後に馬筋を遮断する意味づけの限定打が新しい。
久保紀貴-18飛限定打~馬鋸で99馬~88飛の複合技で馬筋を閉じ、打歩詰を打開。ブルータスの前に飛を限定打するのが新しいところです。 ただ席上では限定打の演出について「27桂のせいで自然な手に見える」という意見がありました。
馬屋原剛-駒場作があるのでそれ程評価していなかったが、確かに限定打から始めたのはプラス。
<参考図> 風ぐるま1955年9月号 駒場和男氏作 「望郷」
◇「遠打+馬鋸で飛車筋遮断」のブルータス手筋
33金寄、同歩、29飛、31玉、32歩、同玉、44桂、31玉、
42と、同玉、51飛成、同玉、62歩成、同玉、52角成、71玉、
81香成、同玉、63馬、91玉、64馬、81玉、54馬、91玉、
55馬、81玉、45馬、91玉、46馬、81玉、36馬、91玉、
37馬、81玉、27馬、91玉、28馬、81玉、73桂、71玉、
72歩、62玉、63歩、同玉、64銀、62玉、63歩、51玉、
61桂成、同玉、71歩成、同玉、77香、同と、62歩成、同玉、
73銀生、51玉、52歩、42玉、43歩、31玉、32歩、22玉、
64馬、24桂、同飛、同金、31馬、12玉、13馬、同玉、
14歩、同金、同香、同玉、24金打、15玉、27桂まで79手詰
■詰パラ2019年4月号 大学院8 馬屋原剛氏作
◇逆回転による微分
『41飛成、23玉、21龍、22飛合、同龍、同玉』=『A』手順とする
『21龍、22飛合、同龍、同玉、21飛、32玉』=『B』手順とする
『A』、55馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
56馬、34と上、『B』 、65馬、43と、
『A』 、66馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
67馬、34と上、『B』 、76馬、43と、
『A』 、77馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
78馬、34と上、『B』 、87馬、43と、
『A』 、88馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
78馬、34と上、『B』 、87馬、43と、
『A』 、77馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
67馬、34と上、『B』 、76馬、43と、
『A』 、66馬、44と寄、21飛、32玉、41飛成、23玉、
56馬、34と上、『B』 、65馬、43と、
『A』 、55馬、44と寄、12飛、31玉、41香成、同玉、
33桂生、同と、51桂成、同玉、42銀、62玉、73と、61玉、
62歩、同金、同と、同玉、51銀生、同玉、42金、62玉、
52金、63玉、62金、74玉、66桂、84玉、94馬、同玉、
85金打、93玉、94歩、92玉、91馬、同玉、82銀、同玉、
72金、92玉、82金 まで179手詰
作者(結果稿解説より)-1手馬鋸や1/2手剥がしなど、いわゆる“微分系”の趣向は「同様」なサイクルを複数回経て鍵が一つ進む。「同様」と表現したのは全く同じではなく、サイクル毎に持駒や置き駒の位置が微妙に異なるからだ。では、全く同じサイクルで微分系の趣向を表現できるだろうか。
一見論理的に無理に思えるが、論より証拠で本作を見て欲しい。確かに全く同様のサイクルを2回繰り返すことで、馬が左下(右上)に一歩動いている。
種明かしをすると、馬と玉の回転方向が逆であるのが肝なのだ。12~89、11~99、21~98のラインをそれぞれa、b、cと呼ぼう。すると、玉はa→b→c→aの順に移動しているのに対し、馬はa→c→b→aの順でしか動けない。従って、馬はaで王手した後にすぐにbで王手したいのだが、間にcの王手を挟まなくてはならない。そのため、1サイクル目ではbの王手ができず、次のサイクルまで待たなくてはならないのだ。趣向の外見に目新しさはないが、コロンブスの卵的な位置づけの作品だと思う。
馬屋原剛-詰工房の席上では参考図2つを交えて説明したがどれだけ伝わったかは微妙。伝統ルールでできるかどうかはさておき、馬ノコ以外で表現できれば、もっと違う印象を与えることができるかも。
太刀岡甫-三段馬鋸。玉方はと金を回すことにより1サイクル分の手数を稼いでいるが、斜め後ろに動けない特性により中央ラインが開くと馬が進むことができる。馬鋸についての深い研究が垣間見られる作。
久保紀貴-玉の軌跡と馬の軌跡(より厳密には、と金スリットの位置の軌跡)の回転方向の違いによって1手馬鋸を実現した作品。説明されないとわかりにくいのが難点ですが、面白いアイデアと思いました。 ただ、合駒制限が必須かは疑問です。
<参考図> 書きかけのブログ 馬屋原剛氏作
◇順回転の3段2手馬鋸
21飛、32玉、23飛成、41玉、63角成、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、64馬、53と寄、
21飛、32玉、65馬、43と上、23飛成、41玉、74馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、75馬、53と寄、
21飛、32玉、76馬、43と上、23飛成、41玉、85馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、86馬、53と寄、
21飛、32玉、87馬、43と上、23飛成、41玉、96馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、97馬、53と寄、
21飛、32玉、87馬、43と上、23飛成、41玉、96馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、86馬、53と寄、
21飛、32玉、76馬、43と上、23飛成、41玉、85馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、75馬、53と寄、
21飛、32玉、65馬、43と上、23飛成、41玉、74馬、52と、
21龍、31飛合、同龍、同玉、64馬、53と寄、
21飛、32玉、44桂、43玉、41飛成、42飛合、同銀成、同と、
同龍、同玉、52飛、41玉、32飛成、51玉、52歩、62玉、
63歩、同と、51歩成、同玉、52桂成 まで117手詰
※4月号大学院の馬屋原氏作とほとんど同じ機構に見えるが、回転方向が同じなので、微分にならない例(3段2手馬鋸)。
<参考図> 詰パラ2017年1月号 添川公司氏作 「木曽路」
『34と、25玉、35と、26玉、36と、17玉、28馬、16玉、38馬、15玉、16歩、24玉、35と、23玉』=『A』手順とする
『33と、24玉、34と、25玉、35と、26玉、36と、17玉、28馬、16玉、38馬、15玉、16歩、24玉、35と、33玉』=『B』手順とする
16歩、26玉、36と、17玉、28馬、16玉、38馬、15玉、
25と、同玉、35と、15玉、16歩、26玉、36と、17玉、28馬、
16玉、38馬、15玉、16歩、24玉、35と、33玉、44と、24玉、
『A』 、56馬、32玉、44と、33歩、65馬、23玉、
『B』 、66馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、67馬、32玉、44と、33歩、76馬、23玉、
『B』 、77馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、78馬、32玉、44と、33歩、87馬、23玉、
『B』 、88馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、89馬、32玉、44と、33歩、98馬、23玉、
『B』 、88馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、78馬、32玉、44と、33歩、87馬、23玉、
『B』 、77馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、67馬、32玉、44と、33歩、76馬、23玉、
『B』 、66馬、44歩、同と、24玉、
『A』 、56馬、32玉、44と、33歩、65馬、23玉、
『B』 、55馬、23玉、45馬、32玉、44と、33歩、43と、同玉、
52銀生、53玉、65桂、42玉、43歩、32玉、41銀生、31玉、
42歩成、同玉、53桂成、同玉、52成銀、43玉、44歩、同飛、
同馬、同玉、45歩、55玉、56飛、65玉、75金、同玉、
85金、64玉、53飛成、65玉、47馬、同香成、56龍、64玉、
76桂、63玉、53龍、72玉、73龍、同玉、84金、63玉、
64金、72玉、83銀成、81玉、82歩、同と、同成銀、同玉、
73金右、81玉、82歩、92玉、83金上、91玉、81歩成、同玉、
82金右 まで367手詰
※1回転目と2回転目で、追い方が変わる3段1手馬ノコの例です。
No. 205 第346回詰工房例会報告
■9月28日(土)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:青○裕一、石○仰、馬〇原剛、大○光一、沖○幸、加○徹、金○清志、久○紀貴、小○正浩、小○尚樹、小○純平、鈴○優希、芹○修、田○雄大、竹○健一、太○岡甫、利○偉、原○慎一、柳○明、山○剛、米○歩登、田中徹 以上22名(敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
(hiroさんのブログでは23人になってる。誰か書き漏らしたみたい…)
■社団戦とブッキングしなかったおかげか、参加者が20名を超え、賑やかな例会になりました。
更に初参加の中学生2人も加わって、会場は一気に若返った感があります。
■3時過ぎ、春霞賞の選考会がスタート。
今回は5月号と6月号の2か月分でボリュームがありましたが、太〇岡さんの的確な解説で順調に進行していきます。またノミネート作の作者が多数参加されていて、作者の生の声を聞けたのは幸運でした。
投票の結果、候補に残った作品は以下の通り。
5月号
高校21 久保紀貴氏作 「モーメンと」
大学14 鈴川優希氏作 「泣斬馬謖」
6月号
同人室3 金子清志氏作
同人室5 鈴川優希氏作
両月とも、2作ずつの選出になりました。
最近複数作の選出が続いているのは、それだけ高品質の構想作の発表が続いている証しでもあります。今年の最終選考は大変な激戦になりそうです。
なお内容については、頁を改めてご紹介いたします。
■続いて注目作の紹介がスタート。ここでは、詰パラとスマホ詰パラから1作ずつご紹介します。
詰パラ 2019年6月号
デパート3 原田慎一氏作
5手目42銀成に12玉と逃げれば、45角成~13歩~63飛成で詰み。序の53角消去はこの63飛成を実現するためでした。
6手目41歩中合なら、同飛成には12玉、13歩、同玉で、成銀が邪魔になって43龍と引けません。そこで中合を取らずに32成銀とし、12玉に45角成~13歩で63飛成を狙えば詰む…。
ならば41の合駒が香だったら? 63飛成の時43歩合で不詰!
ここでようやく、6手目は41香合が最善と判明します。以下同飛成で香が手に入るので、11龍~13香の順で収束します。
5月号デパートの青木氏作にも通じる「後の合駒の足場とするための香中合」ですが、間に成銀が存在することで、香合の意味付けがうまくカモフラージュされています。
角消去の伏線との相乗効果もあって、非常に高度な謎解きが楽しめる逸品です。
スマホ詰パラ 2019年8月
No.13426 i@hiro氏作
角捨て~馬寄り~角捨合を繰り返しながら、玉が盤中央を横断していく趣向作。
序の伏線や、途中同龍でなく同馬とする破調等もあり、単調な繰り返しに終わっていないのがセールスポイント。収束を一瞬で切り上げる潔さも見事です。
■5時からは2次会。自分も参加しましたが、2時間を経過した辺りで睡魔に襲われ、離脱しました。
2次会でのKさんとIさん。
「あそこで○○飛とすると…」「それは同玉の変化で…」「やっぱりそうか…」「あれいい手ですよね…」
といった調子で会話が続いています。
目の前の将棋盤には某氏の新作が並べられていますが、それとはまったく別の作品の話。まるでテレパシーで会話をしているかのようです。
ちょっとしたヒントだけで即座に脳内盤に配置が浮かび、手順が再生される。頭の回転も引き出しも段違い。
格好いいなぁ。
■この日の模様を知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
■ではまた。
No.206 春霞賞候補作紹介 2019年5月号
■春霞賞候補に残った作品の紹介です。
まずは5月号出題作から。
■高等学校21 久保紀貴氏作 「モーメンと」
◇玉方と金の6地点1回転
45銀、同と、46桂、同と、36香、同と、26桂、同と、
25銀、同と、35香、同と、43馬 まで13手詰
太刀岡甫-4地点の回転ならよく見るが、6地点で連続して回したのがまず凄い。また、初手以外の捨駒を駒打ちで行うことにより局面の対比(銀消去)が明確になっている。回転方向の制御が非常にシンプルな仕組みで実現されており、手順完全限定で完璧な仕上がり。
馬屋原剛-ノンストップでと金が6回も動いて1周する。しかも駒取りなしときた。こういう作品は得てして短絡する紛れに苦労するのだが、それを感じさせないほどスマートに出来ている。 最優秀賞候補の一角。
久保紀貴-半期賞の言葉でも書いたが「と金が回転する前後で局面を対比すると攻方銀が消えている(だけ)」という点は特に気に入っている。 また他についても駒取りなし、手順完全限定、最短表現など、全体として自分の美学を貫けたので満足。
<参考図>
詰パラ2013年6月号 宮原 航氏作 「独楽鼠」
◇玉方飛車の6地点1回転
35金、同飛、36桂、同飛、26香、同飛、16桂、同飛、
15角、同飛、25歩、同飛、33馬 まで13手詰
■大学14 鈴川優希氏作 「泣斬馬謖」
◇玉方馬先馬角
69銀、58桂成、同香、55馬、44龍、同玉、56桂、53玉、
65桂、同馬、64桂、56馬、同香、55角生、35角、44桂、
55香、同桂、44角、43玉、65角、54飛、35桂、32玉、
54角、41玉、32角成、同玉、33角成、同玉、34飛、同玉、
24と、35玉、25と まで35手詰
馬屋原剛-複雑ですぐには構想が理解できなかったが、作者のブログを読んで、玉方馬先馬角が狙いとわかった。 私的には、構想よりも感じのよい序や大駒3枚捨ての収束といった、全体の完成度の方に感心した。
久保紀貴-玉方応用の馬先馬角というのはパッと作例を思いつけないため、単品でも表現として新しいものかもしれない。しかし本作はそれだけでなく、同じ手順の流れの中に取歩駒を逃げるための馬移動中合を加えており(ここは構想としては掛け算ではなく足し算になっているが)、より面白い表現が追及されていると思う。
太刀岡甫-馬先馬角というマニアックな構想。角と馬を対称に配し、移動捨合で馬を消し、合駒を出しつつ角2枚を捨て切る収束まで、徹底的に見せ方を追求している。
■詰棋校の期末月とあって、5月号は構想作も好作揃い。その中で久保氏作と鈴川氏の2作は、他のノミネート作を大きく引き離して候補に残りました。
なお久保氏「モーメンと」は、周知の通り見事半期賞を受賞されました。おめでとうございます。
No.207 春霞賞候補作紹介 2019年6月号
■続いて6月号の候補作。5月に続き2作が候補に残りました。
■同人室3 金子清志氏作
◇馬ソッポブルータス
25飛、36玉、26飛、同玉、48馬、35玉、26馬、同玉、
27馬、35玉、39香、24玉、33銀生、23玉、38馬、29と、
24歩、34玉、56馬 まで19手詰
久保紀貴-39馬を消去せず38香~36馬としても打歩詰を解消できるところ、馬を捨ててまで39香~38馬と遠ざかるのが絶妙。近すぎると両王手したときに馬を取られるということなのだが、このように玉と馬の位置関係にフォーカスした作品はかなり希少である。 さらに本作ではそのための遠打、そのための馬消去という表現により、構想が重層化されている。
太刀岡甫-打歩を打開しつつ最終手を見据えた最遠打だが、全く無理なく39馬の邪魔駒消去が入っているのが凄い。駒の位置関係が絶妙である。
馬屋原剛-打歩詰を打開するだけなら、馬より香が後ろにいればよいだけだが、収束を成立させるには、39香、38馬型が絶対。36馬型だと近過ぎて詰まないのが面白いと思った。 39馬の原形消去や39香の限定打を無理なく実現している。絶品。
■同人室5 鈴川優希氏作
◇飛車2枚捨てによる玉方銀成強要
65銀上、47玉、77飛、同銀成、56銀、同玉、76飛、同成銀、
65銀、47玉、56銀、同玉、74馬、45玉、44馬、同玉、
45香、同玉、35金、55玉、65馬 まで21手詰
太刀岡甫-やっていることは成らせだが、飛2枚を投じて釣り合う図があるのが驚きである。離し打ちでやっているのも良く、銀に当てるシンプルな意味付けで成立している。心理的妙手でもあり、印象に残りやすい作。
馬屋原剛-詰工房で見せてもらったときには全く解けず、答えを見たときには度肝を抜かれた作品。 銀を成らせるのに飛2枚が釣り合うとは驚いた。 3、4筋の守備駒が重いがまあ仕方ないだろう。 古典はあまり興味がないのだが、構想のヒントになることもあるのだなと感心。
久保紀貴-ぶつけて打つ飛限定打によって銀を成らせるというのは言われてみればシンプルでなるほどなのだが、なかなかその発想には至らない。非凡なアイデアと思う。 また、個人的には飛金(成銀)銀それぞれの駒の特性がピッタリはまっている点が気に入った。 配置はやや不満あり。
<参考図>
将棋無双第51番 伊藤宗看作
75銀、同玉、64銀、86玉、26飛、同銀、75銀、同玉、
25飛、同馬、76金、74玉、65金、63玉、54金、52玉、
43金、51玉、52金、同玉、43馬、41玉、33桂、31玉、
21馬、42玉、43歩成、51玉、41桂成、同玉、32馬、51玉、
42と まで33手詰
■6月号は同人室の課題が構想作だったことも手伝って、やはりノミネート作が多かったのですが、5月号同様2作がダントツに強く、共に候補に残りました。
特に印象的だったのは、2ヶ月連続で候補入りした鈴川氏の復活振りです。これで今年の春霞賞の行方は、ますます混沌としてきました。
No. 208 第347回詰工房例会不参加報告
■10月27日(日)は詰工房の例会でしたが、囃子関係の行事と重なってしまったため参加できませんでした。
予めこのブログで欠席すると告知しておけば良かったのに、すっかり失念していました。ご心配をお掛けしてしまった方には誠に申し訳ありませんでした。
■そのため今回はプロジェクターを使った作品紹介はナシ。
ということは、以前のように自由な例会に戻った訳で、「やっぱり昔の雰囲気の方がいい。次回から注目作の紹介は不要」とか言われたらどうしよう…。
■春霞賞の選考会も、スタッフが社団戦に出場のため行われず。次の例会で2ヶ月分をまとめて選考します。
■折角ですので、スマホ詰パラから注目作を1局ご紹介します。
スマホ詰パラ 2019年9月
No.13556 oddi氏作
玉方桂の4段跳ね。全て攻方の香を取らせることによって実現しています。
更に、3手目73香と、7手目65香が伏線的な限定打。73香は65香打に対する63飛合を、65香は63との開き王手に56角打合の逆王手を、それぞれ防いでいます。単に狙いを実現するだけで満足せず、手順にも工夫を凝らすことで、本作の価値は格段にアップしました。
配置と収束にはやや苦労の跡が見られますが、この構想を破たんなくまとめ上げた手腕は見事です。
■この日の模様を知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
■ではまた。
No. 209 第348回詰工房例会報告
■11月30日(土)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:會○健大、青○裕一、石○仰、稲○元孝、馬○原剛、尾○充、沖○幸、加○孝志、加○徹、金○清志、久○紀貴、小○正浩、小○純平、角○逸、芹○修、竹○健一、太○岡甫、利○偉、深○一伸、柳○明、山○剛、米○歩登、田中徹 以上23名(敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
■今回は、レジメの原稿はいつもより早めに仕上がっていたのに、印刷に手こずってしまい、会場到着は15時20分頃。
用紙切れも痛かったけれど、それ以上に2ヶ月分のレジメ印刷を甘く見ていたのが敗因でした。
会場に入ると直ちにレジメを配布し、プロジェクターをセッティングして、即春霞賞の選考会開始です。
■この日の進行役は久○さん。
ノミネート作品数が多かったにも関わらず、ポイントを押さえた簡潔明瞭な解説で、候補作の選出までスムーズな進行振りはお見事でした。
久○さんに限らず、詰工房の若手は皆本当に熱心で頼もしい限りです。
激戦の中、候補に残ったのは以下の通り。
7月号
・短大5太刀岡甫氏作
8月号
・高校7山路大輔氏作
・短大10藤井規之氏作
・大学6船江恒平氏作
内容については、頁を改めてご紹介いたします。
■スマホ詰パラから1局ご紹介します。
スマホ詰パラ 2019年10月
No.13801 黄楊の輝き氏作
打診中合を含む歩連合は出てくるものの、全体としてはやや物足りない印象ですが、次の2作と合わせて、3局セットで見ると少し見方が変わるはずです。
スマホ詰パラ 2017年5月
No.9375 黄楊の輝き氏作
スマホ詰パラ 2017年5月
No.9376 黄楊の輝き氏作
わずかな配置の違いから、成と不成、単独合と連合に分岐する面白さは、三姉妹作ならでは。
詰将棋はこんな表現も出来る、そう教えてくれる作品です。
■5時からはいつもの店で2次会です。
今回は久し振りに9時頃まで粘って、楽しい時間を過ごしました。
皆さん、ありがとうございました。
■この日の模様を知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
■ではまた。
No.210 春霞賞候補作紹介 2019年7月号
詰パラ2019年7月号 春霞賞候補作紹介
■短期大学5 太刀岡甫氏作
◇不成による1歩稼ぎ
24角、同玉、15銀、13玉、53飛生、33歩合、同飛生、22玉、
32飛成、13玉、43龍、33歩合、同龍、23歩合、24龍、同歩、
14歩、22玉、32香成、同金、同香成、同玉、43歩成、21玉、
22歩、同玉、23歩、同玉、33金 まで29手詰
太刀岡甫(作者)-攻方にとって飛生のほうが得なので、玉方は1歩と引き換えに成を強制する。33飛/龍の局面が共に作意に出現するため、明確な対比になっていると思う。歩を使い切る収束が同じ舞台で簡潔にできた点も気に入っている。
久保紀貴-飛生で1歩稼ぐというよりは、飛生に33歩合~ソッポ龍に33歩合のリフレインが気に入りました。 似たような展開は過去に一度考えたことがあるのですが、うまく纏められませんでした。少ない枚数で収束まで破たんなく纏めた作者の手腕に拍手です。
馬屋原剛-正直最初は地味な印象を受けたが、冷静に見るとなかなか面白いことをやっている。うまく受ければ歩一枚で事足りそうなのに、歩二枚ないと凌げないのは不思議な感触。 ところで、角でも同様の手順ができるか気になった。興味のある向きは試してみて欲しい。
會場健大-核となる部分は典型的な打歩の不成ものなのだが、それを機能的な配置で趣向風の手順に昇華させたところにセンスが光る。
■ノミネート7作の中、ぶっちぎりの独走で首位通過はお見事。
※今回からスタッフに會場健大さんが加わってくださいました。
この4人って、何気に物凄く贅沢なメンバーですよね。
春霞賞の未来は明るい!
No.211 春霞賞候補作紹介 2019年8月号
詰パラ2019年8月号 春霞賞候補作紹介
■高等学校7 山路大輔氏作
◇銀成強制(局面対比)
28桂、同銀生、19香、同銀成、18香、同成銀、28桂、同成銀、
27角、同成銀、17香、同成銀、26金 まで13手詰
會場健大-一手一手駒を進めていくと、ひとつひとつの捨駒は単純なロジックの積み重ねであることがわかる。それが初形と終形の対比、銀だけが動く手順、というモチーフによってひとつの流れに束ねられているところに作者の顔が見えるのであって、詰将棋表現というのはこういうものだというお手本であろう。
太刀岡甫-持駒を6枚捨てて銀を成らす。その間他の駒は一切動かない。収束もたったの1手。夢のような手順で、思いついても図化するのは非常に難しいと思う。それをこの枚数でさらりとやってのけるのは流石である。
久保紀貴-水谷作が強く印象に残っていたので、28桂~19香~18香までは見えたのですが、そこから曲げてくるとは驚きました。この枚数で実現可能なのですね……。 作者の絶好調振りを示す傑作です。
馬屋原剛-なんとまあムシのいい手順をムシのいい配置で実現していること。ムシが良すぎて今まで誰も挑戦しようとすら思わなかったのだろうか。並の作家であれば、仮にこの仮想手順を思いついたとしても、実現できるわけはないと諦めてしまうだろう。理想の追求を恐れない姿勢に感服。
<参考図>
詰パラ2014年6月号 水谷創氏作
78桂、同銀生、69香、同銀成、68香、同成銀、67香、同成銀、
55銀、同と、56金、同と、77銀、同と、65龍 まで15手詰
久保紀貴(発表時短評)―桂捨てから香3連打。香3連打だけでもテーマになりうるのに、それで銀が成って戻ってくるのだから文句のつけようがない。
■大学6 船江恒平氏作
◇態度打診の捨駒(不成強制)
75銀、同玉、73飛生、65玉、77桂、同角生、66歩、同角生、
54龍、同玉、63銀、44玉、33銀生、同玉、52銀生、53歩合、
同飛生、32玉、33歩、同角、41銀生、21玉、22歩成、同角、
13桂、同角、23飛生、22角、33桂、11玉、12歩、同玉、
13馬、同角、21飛成 まで35手詰
久保紀貴-打診を伏線で実現すること自体珍しいと思いますが、さらに舞台装置を跡形もなく消し去っているのが美しい仕上げです。 攻方の打診をテーマとする場合、その意味づけとなる構図(Aは成で逃れ、Bは生で逃れる構図)をとるのが大変だと思っているのですが、本作の構図は極めて巧妙にできていて、作家としてはそこに一番感心させられました。
馬屋原剛-まずは、成生打診を必要とさせる右上の構図に感心。ここから逆算で左下まで引っ張っていったと思うが、77桂〜66歩がまた絶品。本筋とは関係ないとはいえ、飛生や歩中合も入り、極めて完成度が高い。
會場健大-潜伏期間の長い伏線もの…なのだが、個人的には駒がさばけるのが楽しい。この収束がもっていた物語を存分に引き出したと思えるからで、代償としての駒取りはここではあまり気にならない。
太刀岡甫-攻方による打診。打診に角位置が影響しないよう舞台を移動させるが、それにより打診が伏線的になっている。飛生や歩合が入る点、左辺が綺麗に捌ける点など、圧倒的な完成度である。
久保紀貴-船江作、舞台を動かしているというのはその通りで、唯一ともいえるこの構図の欠点。 本来右上だけで手順を構成できれば最高なのだが、元々の構図で角を2枚使い切っている関係上、右上に働きかける駒(打診できる駒)がない。そのため舞台を動かす必要が生じている。 とはいえそれを全ての舞台装置を消して実現したのは凄いというほかない。
■短期大学10 藤井規之氏作
◇最遠打×2回
39香、34飛合、同香、同金、24桂、同金、39飛、同馬、
33飛、21玉、22歩、同玉、39飛成、21玉、11馬、同玉、
31龍、21銀、44角、12玉、21龍、同玉、22銀、32玉、
33角成 まで25手詰
馬屋原剛-この遠打を繰り返してしまうとは。繰り返そうという発想はどこから浮かんできたのか非常に気になる。仮に発想が浮かんでも具現化するのは難しいはずで、綺麗にまとめあげた手腕は確かなもの。24桂が焦点の捨て駒である点もよい。
會場健大-浦壁手筋のアレンジだが、合駒を入れて駒台の情報にも意味を持たせることで同じ位置に2度打てるという発見。構図にも無理がなく簡潔に実現している。
太刀岡甫-既存の筋も繰り返せば構想になる。言うのは簡単だが、この遠打が繰り返せるのは大発見。局面の戻し方も好手の捨駒で、構想の途中に余計な手が入らないのも良い。
久保紀貴-39香は小林敏樹作が有名ですが、それを繰り返すなんて考えたこともありませんでした。繰り返す意味(飛の品切れ)やスイッチとなる24桂捨てなど、全体として非常に精緻に作られていると思います。 小林敏樹作は今更言うまでもなく名作ですが、本作も併せて覚えておきたいですね。
<参考図 1>
詰パラ1977年8月号 浦壁和彦氏作
93飛、同銀、23飛、34玉、93飛成、12香、23銀 まで7手詰
<参考図 2>
詰パラ1985年7月号 小林敏樹氏作
39飛、同馬、33飛、22玉、13飛成、同玉 まで7手詰
※「この詰2010」をお持ちの方は、ぜひ風みどり氏の論考「超短編における中合対の研究」(同書P138~)を合わせてお読みください。
No. 212 第349回詰工房例会報告
■12月22日(日)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:青○裕一、稲○元孝、馬〇原剛、沖○幸、加○孝志、加○徹、金○清志、金○タ○シ、小○正浩、近○郷、鈴○優希、深〇一伸、山○剛、米○歩登、田中徹 以上15名(敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
■今回、会場到着は14時20分頃だったでしょうか。3時前の会場入りは久し振りのような気がします。
プロジェクターをセッティングしたあとは、作品紹介に備えて予習に専念。
そして午後3時を過ぎたところで、春霞賞の選考会開始です。
■この日の進行役は馬○原さん。
ノミネート7作と多めでしたが、きちんとポイントを押さえた解説は流石です。
現在春霞賞の選考に当たっている若手スタッフは、皆鑑賞眼がしっかりしている上に、過去の発表作にも精通しており、本当に感心させられます。頭の中の引き出しの数が違うんですね。
今回候補に残ったのは次の2作。
中学校11 青木裕一氏作
デパート4 大崎壮太郎氏作
内容については、別頁にてご紹介します。
■スマホ詰パラからは2局ご覧ください。
スマホ詰パラ 2019年11月
No.13841 kisy氏作 「Whitesnake」
中盤の龍追いから2度の飛車限定合辺りの手順は絶品で、147手の長手数を飽きさせない。
だからこそ言わせてもらいますが、玉方95と配置は何やねん!
時間はかかってもいいから、無防備煙への改作を求めます。
スマホ詰パラ 2019年11月
No.13881 himatsume氏作
3手目48金~58銀引として、48の金を銀に置き換えておくのが、潜伏期間の長い第1の伏線(43手目17角に49玉の逃げを防止)。
次いで9手目38香短打が、後の39角打ちを可能にする第2の伏線。
さらに、23手目35銀が玉方の馬を質に見込む第3の伏線。
後半の2度の捨合を含む軽妙な攻防と相俟って、極上の本格ミステリのような謎解きが楽しめる逸品です。
■5時からはいつもの店で2次会です。
開始後間もなく芹○修さんも合流して、詰棋談儀に花を咲かせました。
自分は2時間くらい粘ったところで睡魔に負け、あえなく撤退。
それでも、今年最後の例会を、楽しく過ごさせていただきました。皆さん、ありがとうございました。
■この日の模様を知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
■年明け1月の例会は節目の350回目の開催になりますが、取り立てて記念イベントを行う予定はないようです。
そこはいかにも詰工房らしいですね。
ではまた。
No.213 春霞賞候補作紹介 2019年9月号
新年明けましておめでとうございます!
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
では早速――
詰パラ2019年9月号 春霞賞候補作紹介
■中学校11 青木裕一氏作
◇2枚飛車の「連続限定打+連捨て」による邪魔駒消去
43飛、55玉、52飛、46玉、55飛成、同玉、44飛成、同玉、
36桂 まで9手詰
太刀岡甫-飛車2枚消費して歩を原型消去し、1手で収束する。いずれも打ってから成り捨てるのは統一感があり、どちらも限定打となっているのが素晴らしい。
會場健大-すごい大模様だが表現としてはむしろシンプル。52飛を限定打にする変化で邪魔駒の46歩が生きているところにも機能美を感じる。
久保紀貴-限定打での表現と、収束を1手で纏めてある点が良いですね。大模様はやはり気になりますが、特別気になる配置があるわけではないので、これが最善なのかもしれません。
馬屋原剛-「限定打を2連続で放ち、それをすぐさま捨て去り詰み上がる9手詰を作れ」という課題を与えられたとき、凡人は角で作ろうとするだろう。強力な2枚飛車が、ちっぽけな1歩の消去に見合う、この事実を発見した作者の勝利である。
久保-角2枚で作る方がスマートにできそうですけどね。
馬屋原-スマートなのは角でしょうね。しかし飛で作った青木作は迫力がある。
宮原君の順位戦の作品は角2枚で邪魔駒消去してましたっけ?いざない弓みたいなタイトルの。
久保-ありましたね、好きな作品です。
馬屋原-宮原作、詳細は忘れましたけど、やってることはそんなに変わらないとは思います。
でも飛の方が派手でカッコいいじゃないですか。
久保-私は本質が大事だと思っているので、飛でも角でも香でも、同じことをやるならどれでも構わないんです。だから飛角香の選択まで可能性に含めた上でベストな構図をとりたい。
飛を角にするみたいなバリエーションで元の作品とは違う作品、つまり新作を作ることはできると思うんですが、それで違うこと(テーマ)をやっていることにはならないというのが持論です。
馬屋原-まあ私も実際に作るとなったら、一番すんなり行きそうな角を選ぶかもしれません。
久保-ただ、青木さんの作品は最短での表現ということで、飛を角にする以上のことをやっているとは思います。
角にした方が配置を整理できそうだと思っただけで、テーマは宮原作とは異なると見るべきでしょうね。
<参考図>
詰パラ 2015年6月号
A級順位戦 宮原 航氏作 「いざ綯い弓」
23角、44玉、34角成、同玉、12角、35玉、45角成、同玉、
25飛成、44玉、54飛、同玉、55龍 まで13手詰
■デパート4 大崎壮太郎氏作
◇角遠打+「アンチ禁遊手筋」の桂合
33桂成、同玉、25桂左、32玉、98角、87桂合、33桂成、同玉、
25桂、32玉、87角、同龍、39龍、37桂合、24桂、23玉、
41角、24玉、14角成、同玉、19龍、23玉、13龍、32玉、
33龍、21玉、11歩成、同玉、13香、21玉、12香成、同玉、
13桂成、11玉、22龍 まで35手詰
馬屋原剛-もっと構想部分だけを取り出せなかったかとも思うが、そうすると味気ない作品になってしまう危惧もある。本作は、桂馬消去のタイミングの謎解きが絡み重厚な作品となった。 角を取る位置を玉方の意思でズラす点は、手前味噌ながら、拙作(2017.3たま研③)を思い出した。
會場健大-けっこう構図に制約の多い構想のはずで、うまくまとめたもの。主眼部より「98角よく限定にしたなぁ」とか「桂捨てのタイミング絶妙だなあ」とか思ってしまうのは褒められた態度ではないのかもしれないが、率直な感想。
太刀岡甫-後に桂合するための、争点ずらしの桂合。98角が限定打で入るのも良いし、攻方桂の消去のタイミングも絶妙である。凄い技術だと思う。
久保紀貴-87桂合はアンチ禁じられた遊び手筋とでも言うのでしょうか。ちょっと地味な感じもしますが、序の振り付けが素晴らしく、メインの弱さを補っています。 こちらも気になる初形をしていますが、調べてみると結構ギリギリの配置になっています。
<参考図>
詰パラ 2017年3月号
たま研3 馬屋原剛氏作
57香、同銀成、54歩、63玉、67香、同成銀、53歩成、同玉、
56香、同桂、43角成、同玉、64桂、87龍、93飛成、53歩合、
35桂、33玉、53龍、24玉、23龍、15玉、16歩、同玉、
27龍、15玉、16歩、14玉、23龍 まで29手詰
※13手目64桂に対し、①87龍と取ると龍の利きは7段目に、②76香合、同馬、同龍なら、龍の利きは6段目に残る。どちらの段に龍の利きを残すかの選択権は玉方にあり、玉を1筋に追った時、龍の利きが6段目、7段目のどちらかに残っていれば、僅かに逃れる仕組み。
3度の香限定打によって、6・7段目ともに龍の横利きを遮断するという高度なテーマを、鮮やかに図化した力作です。
No. 214 第350回詰工房例会報告
■1月25日(土)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:會○健大、青○裕一、池○俊哉、稲○元孝、沖○幸、加○徹、金○清志、久○紀貴、小○正浩、芹○修、竹○健一、太○岡甫、筒○浩実、利○偉、深○一伸、細○吉嗣、柳○明、山○剛、米○歩登、田中徹 以上20名
2次会から参加馬○原剛(以上、敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
■1月の例会と言えば、TETSUさんによる恒例の年賀詰鑑賞会。会場に入ると、既に鑑賞会は始まっていました。
毎年のことながら、年賀詰の多いこと。最近はネット上で気軽にアップ出来るようになり、その数は年々増えているように思います。中には詰将棋として全く成立していないものも混じったりしますが、それもご愛嬌でしょうか。
新作の収集・管理においてTETSUさんの右に出る者はいませんが、それでも毎年これだけの作品を集め、レジメを作るとなったら相当な業務量になるはず。本当に頭が下がります。
■4時を過ぎたところで鑑賞会は終了し、春霞賞の選考会開始です。
この日の進行役は會○さん。初登場です。詰将棋にとっても詳しい新人さんは、何をやってもスゴいんです。
しゃべりもウマいし、柿木を使えば驚きの超絶テク! 素晴らしい即戦力ルーキーです。
今回もノミネート10作という激戦の中、候補に残ったのは2作。
詰パラ2019年10月号 春霞賞候補作
高校16 有吉弘敏氏作
大学院7 馬屋原剛氏作「円環の理」
内容については、別頁にてご紹介します。
■スマホ詰パラから1局ご紹介します。
スマホ詰パラ 2019年12月
No.14120 シナトラ氏作
変化、紛れがほとんどなく、極めて易しい作品ですが、なぜかとても印象に残っています。
初形で玉方34銀の23への利きがなくなれば、23との1手詰。17手掛けてそれを実現する、それだけを鮮明に浮き上がらせた小品です。
■5時からはいつもの店へ移動して2次会へ。30分ほどで馬○原さんも合流して、新年会のスタートです。
自分は2時間ほど過ぎた辺りで意識朦朧となり、午後8時頃遂に撤退。でも、いつもながらの楽しいひと時でした。
皆さん、ありがとうございました。
■そう言えば、この日の例会は記念すべき350回目でしたが、何も特別なことはなく、いつも通りの詰工房でした。
いかにも詰工房らしいじゃないですか。この先も永く詰キストの憩の場として続いていってほしいものです。
金○さん、毎月毎月、本当にありがとうございます!
■この日の模様を知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
■ではまた。
No.215 春霞賞候補作紹介 2019年10月号
詰パラ2019年10月号の春霞賞候補作をご紹介します。
■高等学校20 有吉弘敏氏作
◇同一駒による3度の移動中合
76桂、65角、64銀、54玉、59飛、56角、55銀打、45玉、
49飛、47角成、46銀打、56玉、34馬、65玉、69飛、同馬、
57桂 まで17手詰
會場健大-同一角での移動中合3回はインパクト大。2手ずつ逆算して得られそうにない手順という意味では構想してまとめた作品と呼べると思う。原理は比較的単純なのもうれしい。
久保紀貴-構想というよりは趣向といった感じですが、傑作には違いないですね。最後に飛がスイッチバックで消えるところも気に入りました。
太刀岡甫-移動中合を趣向的に繰り返す作。このような手順は見たことがないので構想と言っていいと思います。さらに収束でスイッチバックの飛捨てが入るのが良く、これにより成限定になっているのも巧すぎる構成です。
馬屋原剛-角の移動中合3回はインパクト大ですね。規則的な趣向ですが、仕組みは単純ではなく、絶妙な空間処理によって支えられていると感じました。
■大学院7 馬屋原剛氏作 「円環の理」
◇成駒変換
『35歩、45玉、23馬、34歩合、同歩、56玉、33歩成、57玉、
13馬、67玉、68飛、76玉、78飛、86玉、88飛、95玉』
=『A』とする
23角成、57玉、13馬、67玉、68飛、76玉、78飛、86玉、
88飛、95玉、94と、同玉、93と、84玉、83と右、74玉、
73と右、64玉、63と右、54玉、53と右、44玉、43金、34玉、『A』、
94と、同玉、93と、84玉、83と右、74玉、73と右、64玉、
63と右、54玉、53金、44玉、43と、34玉、『A』、
94と、同玉、93と、84玉、83と右、74玉、73と右、64玉、
63金、54玉、53と、44玉、43と右、34玉、『A』、
94と、同玉、93と、84玉、83と右、74玉、73金、64玉、
63と、54玉、53と右、44玉、43と右、34玉、『A』、
94と、同玉、93と、84玉、83金、74玉、73と、64玉、
63と右、54玉、53と右、44玉、43と右、34玉、『A』、
94と、同玉、93金、84玉、83と、74玉、73と右、64玉、
63と右、54玉、53と右、44玉、43と右、34玉、『A』、
94金、同玉、93と、84玉、83と右、74玉、73と右、64玉、
63と右、54玉、53と右、44玉、43と右、34玉、35歩、45玉、
23馬、46玉、36と、同玉、47金、26玉、27と、同玉、
45馬、26玉、36馬 まで217手詰
馬屋原剛-構想として取り上げていただいたのが意外でした。富沢作や、やよい作と本質的には同じで、回数を増やしただけと思っています。
會場健大-作者自認のとおり新構想というわけでもないが、本人がちょっとした工夫と思っていることがジャンプアップということは多々あるもので、歩を使って実現したのはやはり偉い。
太刀岡甫-駒の性能は全く変わらず、文字だけが微妙に動いていく。歩を使えば回数を増やせると思いついたとしても、33歩成を実現する構図は相当難度の高い創作であったはず。長手数化に加え、大量のと⇔1枚の金の対比がよりクリアになったように思います。
久保紀貴-こちらも趣向テイストですが、趣向の目的が「歩ではなく金を渡す」ところにあるのが構想チックです。桂でやった前例があるのは辛いところですが、なぜか本作の表現の方が構想味を感じました。歩と金だと性能差が明確だからでしょうか?
安武利太-「円環の理」についてご本人は、「構想作に分類されるのが意外」なんですね。私はikironさんの言う通り、「歩ではなく金を渡す」という点がポイントだと思います。玉方の持駒に注目してみると、他の参考図では複数の種類の持駒があり、合駒の選択が可能ですが、「円環の理」では持駒は歩1枚のみ。それを200手近く掛けて、金に変換したことになります。桂や香を品切れにするというより、(形のうえでは)持駒変換と言って良いような…
馬屋原剛-円環の理と、それ以外が別構造かどうかは、昔久保さんたちと議論しましたが、結局円環の理は合駒制限しているから特殊に見えるだけで、本質的には変わらないという結論に至りました。他の参考図をあえて合駒制限してみると、同じ構造に見えるはず。
<参考図>
詰将棋半世紀第18番 柏川悦夫氏作
84角、94玉、86桂、同桂、93角成、同玉、92と、94玉、
95歩、同玉、86金上、94玉、95金、同玉、68馬、94玉、
54龍、74桂合、86桂、95玉、74桂、94玉、93と、同玉、
92金、94玉、82桂成、74桂合、86桂、95玉、74桂、94玉、
93金、同玉、92成桂、94玉、82桂成、74桂合、86桂、95玉、
74桂、94玉、62桂成、54と、86桂、95玉、74桂、94玉、
93成桂、同玉、57馬、94玉、84馬 まで53手詰
<参考図>
詰パラ2002年5月号 富沢岳史氏作
35飛、66玉、36飛、75玉、74と、同玉、73と右、64玉、
63と右、54玉、右、44玉、34飛、45玉、35飛、44玉、
46香、45香合、同香、55玉、香成、66玉、36飛、75玉、
74と、同玉、73と右、64玉、63と右、54玉、成香、44玉、
34飛、45玉、35飛、44玉、46香、45香合、同香、55玉、
43香成、66玉、36飛、75玉、74と、同玉、73と右、64玉、
63成香、54玉、53成香右、44玉、34飛、45玉、35飛、44玉、
46香、45香合、同香、55玉、43香成、66玉、36飛、75玉、
74と、同玉、73成香、64玉、63成香右、54玉、53成香右、44玉、
34飛、45玉、35飛、44玉、46香、45歩合、34飛、55玉、
54飛、66玉、56飛、77玉、68銀、88玉、79金、98玉、
88飛、97玉、98飛、同玉、96飛、同と、88金打、99玉、
89金寄 まで97手詰
<参考図>
詰パラ2016年10月号 やよい氏作
『48馬、56玉、57馬、65玉、66馬、74玉、73成桂、64玉、
74成桂、同玉、41馬、64玉、63成桂、54玉、53成桂右、44玉、
43金、34玉、33金右、25玉』=『A』、
37桂、36玉、14馬、25桂合、同桂、47玉、『A』、
37桂、36玉、14馬、25桂合、同桂、47玉、『A』、
37桂、36玉、14馬、25桂合、同桂、47玉、『A』、
37桂、36玉、14馬、25歩合、同桂、47玉、『A』、
26金、同玉、48馬、17玉、27飛、18玉、19歩、27玉、
37馬、17玉、18歩、同玉、28馬 まで137手詰
No. 216 第351回詰工房例会報告
■2月23日(日)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:會○健大、青○裕一、荒○貴道、池○俊哉、稲○元孝、馬○原剛、大○孝、沖○幸、金○清志、金○タ○シ、小○正浩、竹○健一、太○岡甫、深○一伸、渕○上悠、細○吉嗣、宮○敦史、柳○明、田中徹 以上19名(敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
■小学生の渕○上クンが初参加。
楽しんでもらえたでしょうか。また遊びに来てください。
■やはり気になるコロナウィルスの感染拡大。
例会の席でも解答選手権に向けて、色々と対策が話し合われていましたが、残念ながら、本日チャンピオン戦の中止が発表になりました。
様々なイベントやスポーツの大会で自粛が相次ぐ中での、苦渋の決断だったと思います。
感染拡大防止に積極的な姿勢をアピールしたい安倍総理ですが、今回の「要請」はどうだったか。
学校だけ休みにしたって、感染が止まるとは考えにくい。国民の間に一気に自粛ムードが広がるという効果はありましたが…。
一体いつになったら収束することやら。
■3時少し前、春霞賞の選考会開始です。
進行役の太○岡さんによる解説の後、投票に移ります。
そして候補に残ったのが、これ。
大学院10 田島秀男氏作
内容については、別頁にてご紹介します。
■続いて、スマホ詰パラから2局ご紹介します。
スマホ詰パラ 2020年1月
No.14161 わかば氏作
19手目34龍が渋い一手。21玉には11歩成~14龍、22玉なら14桂~35角成の筋があって、ピッタリ捕まります。
対する33歩合が、同龍なら21玉で打歩詰を見た好防手。収束はいかにも変長や非限定がありそうに見えて、どうやら割り切れているようです。
比較的簡素な形からの、意外性のある攻防が見所です。
スマホ詰パラ 2020年1月
No.14171 aaa太刀岡氏作 「ヘンゼルの道しるべ」
角不成による連取りと馬鋸の組合せは珍しくありませんが、本作は2つの趣向がシームレスで繋がっているのが大きな特徴。
盤面鶯図式に始まり、粘りある収束も力強く、記憶に残る一局です。
■5時からはいつもの店で2次会です。自分は寝不足と娘のお迎えがあったため、そのまま失礼させていただきました。
■この日の模様について知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
■次回の詰工房は3月21日の予定。もしやこちらも中止だなんてことは…?
■ではまた。
No. 217 春霞賞候補作紹介 2019年11月号
2019年11月号の春霞賞候補作をご紹介します。
■大学院10 田島秀男氏作
◇馬筋遮蔽駒スイッチ型複式馬鋸
『19飛、28玉、55角、46香合、同角、同成桂』=『A』
『19飛、28玉、55角、46香合、同角、同と』=『A’』
『29飛右、17玉、19香、18角合』 =『B』
『18香、同玉、19飛、28玉、29飛左、38玉、
65角、47香合、同角、同成桂、39飛、28玉、
29飛右、17玉、19香、18角合、同香、同玉』=『C』
『18香、同玉、19飛、28玉、29飛左、38玉、
65角、47香合、同角、同と、39飛、28玉、
29飛右、17玉、19香、18角合、同香、同玉』=『C’』
『39飛、28玉、29飛右、17玉、19香、18角合、
同香、同玉』=『D』 とする
<作意>
39飛、28玉、29飛打、18玉、19飛、28玉、29飛左、38玉、
37と、同成桂、56角、47香合、同角、同成桂、39飛、28玉、
29飛右、17玉、19香、18角合、同香、同玉、73金、36と、
19飛、28玉、55角、46香合、同角、同成桂、29飛右、17玉、
19香、18角合、71馬、35と、18香、同玉、19飛、28玉、
29飛左、38玉、65角、47香合、同角、同成桂、39飛、28玉、
29飛右、17玉、19香、18角合、同香、同玉、
72馬、36と、 『A』、 『B』、62馬、35と、 『C』、
63馬、36と、 『A』、 『B』、53馬、35と、 『C』、
54馬、36と、 『A』、 29飛左、38玉、65馬、47と、 『D』、
54馬、36成桂、『A’』、『B』、53馬、35成桂、『C’』、
63馬、36成桂、『A’』、29飛左、38玉、74馬、47成桂、『D』、
63馬、36と、 『A』、 『B』、53馬、35と、 『C』、
54馬、36と、 『A』、 29飛左、38玉、65馬、47と、 『D』、
54馬、36成桂、『A’』、『B』、53馬、35成桂、『C’』、
63馬、36成桂、『A’』、『B』、62馬、35成桂、『C’』、
72馬、36成桂、『A’』、29飛左、38玉、83馬、47成桂、『D』、
72馬、36と、 『A』、 『B』、62馬、35と、 『C』、
63馬、36と、 『A』、 『B』、53馬、35と、 『C』、
54馬、36と、 『A』、 29飛左、38玉、65馬、47と、 『D』、
54馬、36成桂、『A’』、『B』、53馬、35成桂、『C’』、
63馬、36成桂、『A』、 『B』、62馬、35成桂、『C’』、
72馬、36成桂、『A’』、『B』、71馬、35成桂、『C’』、
81馬、36成桂、『A’』、29飛左、38玉、92馬、47成桂、『D』、
81馬、36と、 『A』、 『B』、71馬、35と、 『C』、
72馬、36と、 『A』、 『B』、62馬、35と、 『C』、
63馬、36と、 『A』、 『B』、53馬、35と、 『C』、
54馬、36と、 『A』、 29飛左、38玉、65馬、47と、 『D』、
54馬、36成桂、『A’』、『B』、53馬、35成桂、『C’』、
63馬、36成桂、『A’』、『B』、62馬、35成桂、『C’』、
72馬、36成桂、『A’』、29飛左、38玉、
83馬、47成桂、39香、49玉、94馬、同金、
34香、58玉、59飛、67玉、66金、77玉、
78香、同玉、79飛、87玉、88歩、97玉、
98歩、同玉、99飛、88玉、89飛左、97玉、
98歩、同玉、99香 まで743手詰
太刀岡甫-と金と成桂の位置関係という非常にシンプルな仕掛けで馬鋸の往復を成立させ、700手超えの長手数を実現した作。成駒を入れ替えるのは局面の微小変化ということができ、その構図が新しければ構想作と言ってよいでしょう。
ただ、構想というよりも長手数化に重きが置かれているのは還元型無駄合利用からも明らかだと思います。
會場健大-遮蔽駒のスイッチでこんなに手数が延びるとは! 二枚飛車と馬ノコの組み合わせ自体はよく目にするだけに、こんな発展の可能性があったのかと本当に驚いた作品で、長編作品として心からの賛辞を惜しまない。
ただし、選ぶ側の問題として、すごい作品だからとノミネートさせていくだけでは看寿賞と変わらなくなってしまうという指摘には向き合わねばならない。
久保紀貴-1枚剥がすたびに馬を引きつけ、成駒の位置を変えさせる必要がある点に新鮮味を感じる。
馬屋原剛-剥がすたびに一旦馬を近づける必要がある構成はi'll be backと似ているが、1サイクルの趣向手順や、成駒の位置変換の仕組みは遥かに複雑かつ巧妙に造られている。馬ノコによる成駒の位置変換は、同作者のキューブを彷彿とさせるが、キューブに比べるとまだ理解の及ぶ範囲か。成駒の位置変換は今後の超長編のトレンドになるかもしれない。そんな可能性を感じさせる一局。
構想作かどうかは疑問だが傑作であることは間違いない。
※局面還元型無駄合を含む本作。この無駄合についてスタッフに聞いてみたところ、容認派もいれば条件付き容認派もいて、それぞれの解釈に微妙な温度差があるように感じました。ただ、出題時に無駄合が含まれる旨明記すべきという点では、皆概ね一致していました。
面白かったのは「フェアリーに半歩入った感じ」という回答で、言い得て妙なりと感心した次第。
結局、10人いれば10通りの考え方があるからこそ、無駄合論議も規約問題も果てがないのでしょうね。
<参考図>
近代将棋 1996年12月号
河原泰之氏作 「I'll be back」
『38と左、49玉、48と左、59玉、
58と左、69玉、68と左、79玉』=『A』
『78と右、69玉、68と右、59玉、
58と右、49玉、48と右、39玉』=『B』とする
<作意>
79金、同玉、78と引、69玉、68と右、59玉、58と右、49玉、
48と右、39玉、29金、同玉、28と引、39玉、38と右、29玉、
21龍、26と、28と左、39玉、32龍、36と、38と右、29玉、
23龍、26と、28と左、39玉、34龍、36と、38と右、29玉、
25龍、26と、28と左、39玉、『A』、
75龍、76と、78と左、89玉、85龍、86と、88と右、79玉、
『B』、
35龍、36と、38と右、29玉、24龍、26と、28と左、39玉、
33龍、36と、『A』、
73龍、76と、『B』、38と右、29玉、
23龍、26と、28と左、39玉、34龍、36と、38と右、29玉、
25龍、26と、28と左、39玉、『A』、78と左、89玉、
85龍、86と、88と右、79玉、『B』、
35龍、36と、38と右、29玉、24龍、26と、28と左、39玉、
33龍、36と、38と右、29玉、22龍、26と、28と左、39玉、
『A』、
72龍、76と、『B』、
32龍、36と、38と右、29玉、23龍、26と、28と左、39玉、
34龍、36と、38と右、29玉、25龍、26と、28と左、39玉、
『A』、78と左、89玉、
85龍、86と、88と右、79玉、『B』、
35龍、36と、38と右、29玉、24龍、26と、28と左、39玉、
33龍、36と、38と右、29玉、22龍、26と、28と左、39玉、
31龍、36と、『A』、
71龍、76と、『B』、38と右、29玉、
21龍、26と、28と左、39玉、32龍、36と、38と右、29玉、
23龍、26と、28と左、39玉、34龍、36と、38と右、29玉、
25龍、26と、28と左、39玉、『A』、78と左、89玉、
85龍、86と、79と、98玉、87銀、同と、同龍、同玉、
88と、76玉、77と左、65玉、66と、64玉、75と、63玉、
53銀成、同玉、45桂、52玉、62角成、同玉、44角、52玉、
53桂成、51玉、33角成、61玉、43馬、72玉、64桂、81玉、
54馬、同飛、82歩、同玉、83歩、81玉、82香、71玉、
72歩、61玉、52桂成、72玉、62成桂寄、73玉、63成桂引
まで311手詰
No. 218 第352回詰工房例会報告
■3月21日(土)詰工房の例会に参加してきました。
参加者:會○健大、青○裕一、池○俊哉、井○徹也、今○修、稲○元孝、岩○修、馬○原剛、沖○幸、金○清志、岸○裕真、久○紀貴、小○正浩、鈴○優希、田○雄大、竹○健一、太○岡甫、野○村○彦、長○川○地、渕○上悠、細○吉嗣、柳○明、山○大輔、和○積商、田中徹 以上25名
2次会から参加 芹○修(以上敬称略)
※漏れや誤字があったら申し訳ありません。
■コロナウィルス感染拡大の影響により、解答選手権も中止に追い込まれる中、会場には多数の詰キストが集結。
皆さん待ちかねていたのでしょう。こころなしか、いつもより楽しげな雰囲気が伝わってくるようです。
■解答選手権関係の打ち合わせをしたり、紹介予定作の復習をしたりするうちに、定刻の3時となり、春霞賞の選考会開始です。
今月の進行役は會○さん。12月は詰棋校が休みなので、構想作は少ないのが普通ですが、今回はノミネート8局と豊作でした。
内容的にも見応えのある作品が多く、接戦を予想していましたが、投票の結果大崎氏の作品が余裕をもって逃げ切りました。
12月号 春霞賞候補作
創棋会3 大崎壮太郎氏作
内容については、別頁にてご紹介します。
■スマホ詰パラからは今回も2局ご紹介します。
スマホ詰パラ 2020年2月
No.14311 keima82氏作
13と、同玉、12桂成、14玉、84飛、(イ)74香、同飛、34香合、同飛、同桂、13成桂、15玉、24銀、25玉、26香、同玉、35角、25玉、26香、同桂、52馬、34香合、同馬、同玉、53角成、36銀成、23銀生、33玉、35香、同成銀、34香、同成銀、同銀生、同玉、37飛、24玉、35馬、33玉、44馬、42玉、33飛成、51玉、52銀、同玉、34馬、41玉、43龍、42飛合、同龍、同玉、43飛、52玉、(A)73飛成、41玉、71龍、同銀、52金、32玉、23成桂まで59手詰
(イ)で34香合は41馬以下非常に難解ながら早詰あり。そこで馬筋を止めるため74に合駒をすることになりますが、(イ)74歩合で、同飛、同香では、13成桂、15玉、24銀、25玉、26歩、同玉、35角、36玉、37香、25玉、27飛、34玉、53角成、36合、44馬迄。
そこで、(イ)74歩合、同飛の時、34香合とするのがうまい延命手段。
ところがこれで作意手順通りに進めていくと、(A)73飛成の時に73の香を取れるので、同手数駒余りになってしまいます。
故に、(イ)で74香と移動中合するのが最善(駒が余らない)になる、という仕組みです。
新種のやけくそ中合といった趣ですが、移動中合してからその理由が判明するまで47手(!)という驚くべきスパンの遅効手であり、ほとんど前例がないのではないでしょうか。
スマホ詰パラ 2020年2月
No.14330 relax氏作
初形「ニ」に始まり、→「エ」→「ニ」→「エ」→「ユ」→「ニ」→「ユ」と次々にカナ文字が現れる7段曲詰。
オール打ち捨てで、しかも初形で3段目にいた角と銀が、詰上りでは1段目の2枚の香と入れ替わっているというオマケ付き。手順もきちんと限定されていて、類作さえなければ、歴史に残るべき作品です。
■5時からはいつもの店で2次会です。自分は町内会の会合があり、そのまま失礼させていただきました。
この日の模様について知りたい方は、例によってhirotsumeshogiさんのブログ、「詰将棋の欠片」をご覧ください。
どうやら遅くまで盛り上がったようですね。
■自粛、自粛で皆さん本当にうんざりしていたのでしょう。顔を合わせてたわいもない話をする、それだけのことが実はとても貴重なことなのだと、思いを新たにしました。
ここ数日で一気に感染のペースが拡大し、今やいつ「非常事態宣言」が出されてもおかしくない状況です。先が見通せないだけに、陰鬱な思いが募ります。
ただ、詰キストは盤駒さえあれば自宅にいても不自由はないはず。
むしろこの自粛期間中に、名作・傑作がいくつも生まれることを期待したいと思います。
■ではまた。
No219 春霞賞候補作紹介 2019年12月号
詰パラ2019年12月号の春霞賞候補作を紹介します。
■創棋会3 大崎壮太郎氏作
◇不利逃避のための捨合
44飛引成、26玉、35龍、同玉、44角、36玉、34飛、35桂合、
同飛、26玉、15飛、36玉、35飛、47玉、39桂、同歩成、
38角、同と、48歩、同と、56銀、46玉、47歩、同と、
55銀 まで25手詰
會場健大-玉の身のかわしだけでなく、合駒で駒の経路を変えさせることで取らせを実現するというのは新構想。その前に馬の利きを通す序もうまく決まっている。
馬屋原剛-①飛車捨てによって48へ利きを通す ②不利逃避によって、48への利きをなくす ③不利逃避で入手した駒で再び48へ利かす といった48への利きを巡るストーリーが素晴らしい。構想作として理想的な構成となっている。
久保紀貴-不利逃避のために桂まで渡す主眼部分はもちろんだが、それが一貫したストーリーの中に配されている点を評価したい。 「馬の利きを通して打歩詰を解消しようとしたら、その馬を渡すための桂合+不利逃避で受けられた。そこで、もらった角桂で歩を成らせて再び打歩詰を解消する」という構成がお見事。
太刀岡甫-桂捨合の効果は26を開けることしかないので、純粋に不利逃避のための合駒といえる。構想がわかりやすい作りなのが嬉しい。不利逃避を目的にするというのは新しく、さらなる発展の可能性も秘めていそう。主眼の前に馬筋を通すための26歩消去を入れたのも理想的な序。収束も過不足なく決まっている。
※不利逃避で角を消去するために捨合をする。つまり、角を渡すために桂まで差し出しながら、それでもバランスが取れているのは、作者の選んだ構図の優秀さを示しています。
完成度の高い逸品です。